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山廃仕込みを試してみるなら

■長い歴史を持つ日本酒

日本酒の起源ははっきりとわかっていませんが、昔は雑穀を口に入れ、噛むことによって口の中の常在菌と混ぜ合わせ、醗酵させることによって酒とした噛み酒なるものが存在したということが、歴史に記されています。
とはいえ、こうした酒はあまり美味しくなかったでしょうし、味わうにも時間がかかります。
日本に本格的に現在のような日本酒が生まれたのは、稲作が定着した弥生時代と考えられていて、縄文時代後期にはすでに稲作が始まっていたとする説もあるため、縄文時代後期から弥生時代にかけて、米作りとともに酒造りが行われていたと考えるのは、それほど史実とかけ離れているとはいえないでしょう。
もちろん、当時は今ほど時間をかけて酒造りをしていたわけではなく、米と米麹、そして水を使って醗酵させ、できたらすぐに飲んでいた、いわゆるどぶろくと呼ばれる白濁した酒がメインであったと考えられます。
その後、歴史を重ねるにつれて酒造りは進化し続け、名水がある京の伏見や灘などが名酒の地として知られ、酒造りは発展していったのです。

■製法と環境にもさまざまな歴史が

鎌倉時代から酒造りの製法はすでにできあがっており、室町時代にかけて酒蔵が爆発的に増えました。
当時の酒蔵は、できるだけ雑菌が繁殖しないように涼しくて暗い環境にしているところがほとんどで、戦前まで酒造りの製法と環境はたいして変わらなかったと考えられます。
現在では、老舗の酒蔵として外観は古き時代を思わせる佇まいのままにしているとしても、中は驚くほどハイテクな設備になっている酒造会社が多く、酒造りの製法が大きく変化し、さらには進化したことが実感できます。
創業450年を迎えるとされる菊姫合資会社は、はっきりした創業年がわからないくらい歴史ある酒蔵ですが、時代を感じさせる建物外観や暖簾、そして酒蔵を示す杉玉などから、さぞや古くからの酒造りを守っているのだろうと考えてしまいますが、実際には近代化された充実設備に驚かされること必至です。
酒造りは、原料の米はもちろん、麹菌の扱いには大変気を遣うデリケートな作業となっていますので、手作業で行うという点は大事にしながらも、そのための環境はテクノロジーを駆使し、広いスペースを贅沢に取って行っています。
長い歴史の間で培ってきたであろう酒造りの方法を大事にしながらも、必要だとなれば臨機応変に変え、新しいものを取り込んできたことが、菊姫の品質を高めてきたのは間違いなさそうです。

■山廃仕込みの吟醸酒

菊姫には、山廃仕込みの吟醸酒、略して山吟というラインナップがあります。
17世紀にはすでにあった仕込み方法ですが、とにかくアルコール醗酵させるための酵母菌造りが非常に大変だった山廃仕込みは、戦後、ほとんど用いられなくなります。
けれど、そんな手間暇のかかる仕込みも技術の進化によって復活し、菊姫ではいち早く山廃仕込みによる吟醸酒を造り、失われていた山廃ならではの味を堪能することができるようにしたのです。

■飲みにくいというイメージを払拭してくれるかも

菊姫 吟醸酒 山廃吟醸は、本格山廃仕込み製法がもたらす乳酸によるキレと、深い旨味、そしてコシのある味わいという、山廃ならではの特徴を持つ味わいが楽しめる吟醸酒です。
山廃だけが生み出せる濃醇さとコクのある風味は、好きな人にとってはたまらないものの、男酒という異名をとることからも、淡麗な飲み口が好きな人にとっては、山廃は苦手と避けることが少なくありません。
その点、菊姫が造る吟醸酒の山廃は、菊姫が450年の長きにわたって培ってきた杜氏と蔵人、そして蔵元の技術が結集して造られるだけあって、その見事な技が飲みやすい山廃に仕上げているのが特徴です。
これまで山廃は飲みにくいと敬遠してきた人には気軽にトライできる720mlサイズがおすすめで、冷酒からぬる燗へと温度ともに変わる味の違いがわかると、これまでの山廃は飲みにくいというイメージが一新されるかもしれません。