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■メキシコにおけるテキーラの産地
メキシコといえば、国を挙げて飲まれているお酒がテキーラであることはよく知られています。
また、テキーラといえばお酒のことと思う人が多い中、もともとはこのお酒が造られた場所の名前が、そのままお酒の名前になったという歴史については、意外と知られていないのではないでしょうか。
メキシコ中部にある地方自治体の一つであるハリスコ州にある中心的な町の名前が、サンティアゴ・デ・テキーラで、この場所を表す際にも単に「テキーラ」と呼ばれます。
お酒のことを言っているのか、それども地名のことを言っているのかは文脈から判断するしかありませんが、便宜上、自治体を指す時はテキーラ市といい、サンティアゴ・デ・テキーラだけを指す場合にはテキーラ町と呼ばれてきたということを知っておくと、わかりやすいでしょう。
この地区には1600年に初めてテキーラを作る工場が建てられましたが、ハリスコ州第二の都市であるグアダラハラにも、テキーラ村なる場所が存在します。
ハリスコ州の州都でもあり、中米屈指の都市となっていて、スペインの植民地だった頃の面影を残していることから、グアダラハラという名前もスペインの都市に由来しています。
日本とは京都市と姉妹提携を結んでいる都市であり、日本人観光客も多く訪れる人気観光地です。
都市としての雰囲気もよく、観光地としても最適ですが、多くの人が楽しみにしているテキーラの博物館が、ここ、グアダラハラにあるのです。

■テキーラの歴史が分かる都市
グアダラハラにあるテキーラ村には、原料となるアガベ畑が一面に広がっており、年間2億lのテキーラがここで生産されています。
1978年にテキーラ起源称号と指定されてからは、ここで獲れるアガベ以外を原料にして製造したものはテキーラと呼べなくなってしまったほどです。
テキーラ村に18世紀に建てられた教会が、現在、テキーラ博物館となっており、テキーラができるまでの蒸留のプロセスを見学できたり、様々な種類のテキーラを試飲することができるようになっています。
ここに、メキシコでもっとも多くのシェアを占めるホセ・クエルボ社の蒸留所ラ・ロヘニャがあり、原材料のリュウゼツランがどのようにしてテキーラになっていくかをガイド付きで説明してくれているため、日本人旅行客が多く訪れる理由となっています。
特に、ホセ・クエルボ社のテキーラは、200年という歴史を持つほど有名なことから、日本人にとってはもっともなじみのあるテキーラの会社であり、クエルボ エスペシャル シルバーテキーラ」といった樽熟成をしないプレミアムテキーラもあります。
樽熟成をしないわりには飲みやすく、カクテルのベースとして、あるいはそのままでもよく飲まれるタイプです。

■世界遺産でもあるテキーラ
2006年、ハリスコ州のテキーラ村は世界遺産に登録されています。
ハリスコ州のテキーラ市と周辺に広がる広大なリュウゼツラン畑、さらには古いテキーラの工場とその周囲に存在する遺跡を含め、「リュウゼツラン景観とテキーラ村の古式産業施設群」として登録されたわけです。
この世界遺産がテキーラというお酒を作る目的のために存在したにもかかわらず、それが世界遺産に登録されるのですから、いかにテキーラというお酒が長い歴史を持ち、世界中から注目を集めているかが分かるというものです。
テキーラ村はグアダラハラから50kmほど離れたところにありますので、ツアーに参加するのが便利そうです。

■古い町並みとともにテキーラを楽しもう
テキーラ村には古き良き時代のメキシコの雰囲気が残っています。
もともとはプルケと呼ばれる発酵したお酒がテキーラになったのは、スペイン人入植者によって現在の蒸留酒へと姿を変えたものの、その変化を歴史の変遷の中でメキシコの人たちが率直に受け入れてきたからでしょう。
テキーラ村の美しくも懐かしい景色を眺めながら、テキーラの歴史にも思いを馳せながら飲んでみると、テキーラ村で飲むテキーラがまた格別な味わいになるはずです。
世界遺産でテキーラを味わうというのは、何とも乙なものです。