
日本酒造りの格言「一麹、二酛、三造り」
日本酒造りの世界には、「一麹(いちこうじ)、二酛(にもと)、三造り(さんつくり)」という言葉があります。
酒造りで大切なものを順番に表した格言で、1番目が麹、2番目が酛(酒母)、3番目がもろみの造りを指します。
日本酒は、米と米麹と水を原料に、微生物の力を借りて造られるお酒です。
精米・洗米・蒸米
酒造りは、玄米を磨く「精米」から始まります。
米の外側には、たんぱく質や脂質など、雑味のもとになる成分が多く含まれているため、これを削り取ります。
一般的な日本酒でも玄米の2〜3割、大吟醸酒では半分以上を削ります。
精米した米は、洗って水を吸わせ(洗米・浸漬)、大きな蒸し器で蒸し上げます(蒸きょう)。
一麹:麹造り
蒸した米に麹菌をふりかけ、温度と湿度を管理した「麹室(こうじむろ)」で、約2日かけて米麹を造ります。
麹は、米のでんぷんを糖に変える酵素を生み出す、酒造りの要です。
麹の出来が日本酒の味わいを大きく左右するため、「一麹」と最も大切にされています。
二酛:酒母造り
次に、米麹、蒸米、水に、酵母を大量に増やした「酒母(しゅぼ)」、別名「酛(もと)」を造ります。
酒母は、もろみの発酵を健全に進めるためのスターターの役割を果たします。
自然の乳酸菌の力を利用する「生酛(きもと)」や「山廃(やまはい)」、乳酸を加えて造る「速醸酛(そくじょうもと)」などの方法があります。
三造り:三段仕込みと並行複発酵
酒母に、米麹、蒸米、水を3回に分けて加えていくのが「三段仕込み」です。
1回目を「初添え」、2回目を「仲添え」、3回目を「留添え」と呼び、量を段階的に増やすことで、酵母の働きを保ちながら、大量のもろみを安全に造ることができます。
もろみの中では、麹が米のでんぷんを糖に変える「糖化」と、酵母が糖をアルコールに変える「発酵」が同時に進みます。
この「並行複発酵」によって、日本酒は醸造酒としては珍しく、20度前後の高いアルコール度数になります。
上槽・火入れ・貯蔵
発酵を終えたもろみを搾り、日本酒と酒粕に分ける工程を「上槽(じょうそう)」といいます。
搾ったお酒は、ろ過をしたあと、60〜65度ほどに加熱する「火入れ」を行い、殺菌と酵素の働きを止めます。
その後、タンクで貯蔵して味わいを落ち着かせ、出荷前にもう一度火入れをして瓶詰めされるのが一般的です。
火入れをしないものが「生酒」、搾ったあと水を加えないものが「原酒」です。
杜氏と蔵人
日本酒造りを指揮する職人の長を「杜氏(とうじ)」、杜氏のもとで働く職人を「蔵人(くらびと)」と呼びます。
微生物の働きを見極めながら行う酒造りには、長年の経験と技が欠かせません。
酒造りから生まれる酒粕
日本酒を搾ったあとに残るのが「酒粕」です。
酒粕には、米や麹、酵母に由来するうま味や香りがたっぷり含まれています。
粕汁や甘酒、魚や肉の粕漬けなど、昔から料理に活用されてきました。
冬になると、多くの酒蔵や酒販店で、搾りたての「板粕」が販売されます。
吟醸酒を搾ったあとの酒粕は、華やかな香りがあり、特に人気があります。
日本酒造りの副産物である酒粕を料理に使ってみると、日本酒の世界をより身近に感じられるでしょう。
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